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author kent <kent@cr.ie.u-ryukyu.ac.jp>
date Tue, 16 Feb 2010 14:04:40 +0900
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\chapter{序論}
\label{chp:intro}
\pagenumbering{arabic}

%% 問題提起
%% 解決案の提示
%% 研究目標
%% 本論文の各章の概要


\section{背景と目的}


企業システムの多様化、IT導入の加速により、ソフトウェアは大規模化・複雑
化する傾向にある。また家電製品のデジタル化も進み、組み込みシステムの需
要も増大している。

それにともないハードウェアは驚異的な進歩を遂げ、近年はCPUのマルチコア
化が進み、また新たな段階を築こうとしている。

ハードウェアの進歩に対し、ソフトウェアの開発に用いられる記述言語は、オ
ブジェクト指向プログラミングの発明・導入やデザインパターンに見られる技
術の集約などが行われ、注目されてきた。
%しかしながら90年代以降、言語その物に対する大きな変化は見られない。
オブジェクト指向を主としたJavaはその有用性が認められ多くのシステム開発
に取り入られている。
しかしその反面、Javaではガベージコレクタや実行時コンパイルにより、余分
な処理が必要となる。そのため軽量かつ高速な応答が要求される Real-time処
理や組込み用途には適さない。
%しかしその反面、Cなどの低レベルな言語による記述に比べてこれらの技術は
%余分な条件判断やメモリアクセスを増やしてしまう。そのため軽量かつ高速な
%応答が要求される Real-time処理や組み込み用途には適さない。

%またCellに見られるような複雑なアーキテクチャをもつマシンではプログラ
%ミング自体も複雑になる。Cで記述されたプログラムからアーキテクチャに直
%接関わる命令 (DMAやシグナル)を使用するのでは、高級言語の設計思想と
%矛盾するともみられる。
またPlayStation3にはCell Broadband Engineという特殊なCPUが採用され注目
されている。しかしこの様な複雑なアーキテクチャを持つマシンではプログラ
ミング自体も複雑になる。Cで記述されたプログラムからアーキテクチャに直
接関わる命令 (DMAやシグナル)を使用するのでは、高級言語の設計思想と矛
盾するともみられる。


大規模システムにおけるバグの存在も深刻な問題である。
テストファーストな開発スタイルなどで工学的なアプローチからバグの抑制が
試みられているが、完全な排除は難しい。数学的なアプローチから無矛盾を証
明する技術の研究も進んでいるが、現在のスタックベースのプログラミングは
状態数が膨大になり、実用化された例は少ない。しかしマルチコアの台頭によ
り並列プログラミングの必要性も高まっており、今後はより検証の必要性が増
すと考えられる。

ハードウェアの進化や数学的検証にソフトウェアが対応するためには、これま
でとは違う新たな視点を持ったプログラミング言語が望ましい。
しかし既存のソフトウェアやシステムは膨大な数に上り、これらを新しい言語
に書き換えるのは無理がある。新しい言語は古い言語との互換性が必須である。


我々はこれらの問題に取り組むため、Continuation based C(以下CbC)とい
う言語を提案している。Continuationとはプログラムの次の実行処理を表現す
る制御構造で、継続とも呼ばれている。CbCではCからサブルーチンや
ループ制御を除き、代わりに継続をベースとした実行制御を行う。この特徴か
ら、CbCはCの下位言語と考ることができ、ハードウェアの記述や記述したプロ
グラムの検証などを目的として設計されている。
%我々はこれらの問題に取り組むため、Continuation based Cという言語を提案
%している。Continuation based C(以下CbC)はCからサブルーチンやループ構
%造を除いたCの下位言語であり、ハードウェアの記述、また記述したプログラ
%ムの検証などを目的としている。

%これまでCbCのコンパイルには、micro-cをベースとしたコンパイラとGNUコン
%パイラコレクション(以下GCC)をベースとしたコンパイラが用いられてきた。
%しかしGCCにはバグや当初の期待ほど速度がでないという問題があり、研究段
%階であるCbC言語自体にも仕様の変更などがあった。
これまでCbCのコンパイルには、micro-cをベースとしたコンパイラが用いられ
てきた。加えて2008年の研究においてGCCをベースとしたCbCコンパイラが開発
され、継続処理の実装が行われた。

%TODO: taskmanager
本論文ではGCCベースのコンパイラにおいて残るCbCの機能の実装を行い、実
用的な CbCプログラムの動作を目指す。
%本論文ではGCCベースのCbCコンパイラの問題の洗い出しとその問題の改善を行
%い、実用レベルのCbCプログラムの動作を目指す。

%また、CbCを用いたプログラムの例として現在開発中のCbCベースTaskManager 
%の紹介を行う。
また、実装したGCCベースコンパイラの評価としてmicro-cベースコンパイラと
の速度比較を行い、GCCの開発リリースに合わせるためのメンテナンス手法に
ついても考察する。





\section{論文構成}

次章以降、本論文では本研究での成果を報告する。

\ref{chp:cbc}章ではまずCbCについてその言語仕様から説明し、また現時点で
のCbCコンパイラの問題点を挙げる。

\ref{chp:gcc}章では本研究での移植対象であるGNU コンパイラコレクション
の構造について、簡単に説明する。

\ref{chp:impl}章は実際の実装方法、改善の手法を説明し、これらの結果の評
価を\ref{chp:eval}章で行う。

最後に、本研究での成果と今後の課題を\ref{chp:conc}章で述べ、本論文のま
とめとする。