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author Masataka Kohagura <kohagura@cr.ie.u-ryukyu.ac.jp>
date Wed, 20 Jan 2016 17:02:45 +0900
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\chapter{並列処理向け I/O}
ファイル読み込みなどの I/O を含むプログラムは、読み込み時間が Task の処理時間と比較してオーバーヘッドになることが多い。
計算処理の並列化を図ったとしても I/O がボトルネックになってしまい処理全体が高速にならない。
本項では Cerium に実装した並列処理用 I/O を行ない、I/O 部分の高速化を図った。

Cerium の例題ではファイル読み込みを mmap にて実装していた。
しかし、mmap だとファイルを読み込んでから Task を実行するので、読み込んでいる間は他の CPU が動作せず並列度が落ちる。

mmap は function call 後にすぐにファイルを読みに行くのではなく、仮想メモリ領域にファイルの中身を対応させる。
その後メモリ空間にアクセスされたときに、OS が対応したファイルを読み込む。
また、読み込む方法が OS 依存となってしまうため環境に左右されやすく、プログラムの書き手が読み込みの制御をすることが難しい。

図\ref{fig:mmap}は mmap で読み込んだファイルに対して Task1 、 Task2 がアクセスしてそれぞれの処理を行うときのモデルである。

Task1 が実行されると仮想メモリ上に対応したファイルが読み込まれ、読み込み後 Task1 の処理が行われる。
その後 Task2 も Task1 と同様の処理が行われるが、これら 2 つの Task の間に待ちが入る。

\begin{figure}[htpb]
  \begin{center}
    \includegraphics[scale=0.7]{images/cerium/mmap.pdf}
  \end{center}
  \caption{mmap Model}
  \label{fig:mmap}
\end{figure}

mmap を使わず、読み込みを独立した Thread で行ない、ファイルを一度に全て読み込むのではなくある程度の大きさ(Block)分読み込み、読み込まれた部分に対して並列に Task を起動する。
これを Blocked Read と呼び、高速化を図った。

Blocked Read を実装するにあたり、WordCount を例題に挙げる。
ファイルを読み込む Task (以下、ReadTask) と、読み込んだファイルに対して計算を行う Task (以下、WordCount) を別々に生成する。ReadTask は一度にファイル全体を読み込むのではなく、ある程度の大きさで分割してから読み込みを行う。分割して読み込んだ範囲に対して WordCount を行う。

WordCount を Blocked Read で読み込み処理をしたとき以下の図\ref{fig:BlockedRead}の様になる。

\begin{figure}[htpb]
  \begin{center}
    \includegraphics[scale=0.5]{./images/cerium/blockedread.pdf}
  \end{center}
  \caption{BlockedRead による WordCount}
  \label{fig:BlockedRead}
\end{figure}

Task を一定の単位でまとめた Task Block ごとに生成して WordCount を行なっている。
Task Block で計算される領域が Blocked Read で読み込む領域を追い越して実行してしまうと、まだ読み込まれていない領域に対して計算されてしまう。
その問題を解決するために依存関係を適切に設定する必要がある。
Blocked Read による読み込みが終わってから TaskBlock が起動されるようにするため、Cerium の API である wait\_for にて依存関係を設定する。

また、ReadTask は連続で処理される必要がある。
なぜならば、ReadTask でファイルを読み込む前提で WordCount がその領域に対して計算を行うので、ReadTask の処理が遅くなってしまうだけでオーバーヘッドとなってしまう。\ref{fig:BlockedReadModel}

\begin{figure}[htpb]
  \begin{center}
    \includegraphics[scale=0.5]{./images/cerium/blockedreadimage.pdf}
  \end{center}
  \caption{BlockedRead Model}
  \label{fig:BlockedReadModel}
\end{figure}

\newpage
Blocked Read を実装することにより、読み込み部分と処理部分の並列化を行なった。Blocked Read は連続で読み込まれる必要があるため、さらに I/O 専用 thread を実装した。

Cerium Task Manager では、それぞれの Task に対してデバイスを設定することができる。
SPE\_ANY 設定をすると、Task Manager が CPU の割り振りを自動的に行う。
Blocked Read は連続で読み込まれなければならないが、SPE\_ANY で設定すると Blocked Read 間に別の Task が割り込まれる恐れがある。(図\ref{fig:spe_any_blockedread})

\begin{figure}[htpb]
  \begin{center}
    \includegraphics[scale=0.7]{./images/cerium/speblockedread.pdf}
  \end{center}
  \caption{BlockedRead と Task を同じ thread で動かした場合}
  \label{fig:spe_any_blockedread}
\end{figure}

Task が Blocked Read 間に割り込まれないようにするため、I/O 専用 thread である iO\_0 の設定を追加した。

IO\_0 は SPE\_ANY とは別 thread の scheduler で動作するので、SPE\_ANY で動作している Task に割り込むことはない。
しかし、読み込みの終了を通知し、次の read を行う時に他の Task がスレッドレベルで割り込んでしまう事がある。
pthread\_getschedparam() で IO\_0 の priority の設定を行う必要がある(図:\ref{fig:iothread_blockedread})。
\begin{figure}[htpb]
  \begin{center}
    \includegraphics[scale=0.7]{./images/cerium/iothread.pdf}
  \end{center}
  \caption{IO Thread による BlockedRead}
  \label{fig:iothread_blockedread}
\end{figure}

IO\_0 で実行される Task は Blocked Read のみで、さらに IO\_0 の priority を高く設定することにより Blocked Read が他の Task に割り込まれることなく連続に実行される。