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author Takahiro SHIMIZU <anatofuz@cr.ie.u-ryukyu.ac.jp>
date Tue, 27 Nov 2018 15:22:57 +0900
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files Paper/anatofuz.pdf Paper/anatofuz.tex
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+++ b/Paper/anatofuz.tex	Tue Nov 27 15:22:57 2018 +0900
@@ -53,7 +53,7 @@
 MoarVMはJITコンパイルなどをサポートしているが, 全体的な起動時間及び処理速度がPerl5と比較し非常に低速である.
 この問題を解決するためにContinuation based C (CbC)という言語を一部用いてMoarVMの書き換えを行う.
 CbCはCよりも細かな単位で記述が可能である為, 言語処理系の実装に適していると考えられる.
-その為, 本論文ではCbCを言語処理系に用いた場合の利点やデバッグ手法などについても述べる.
+その為, 本稿ではCbCを言語処理系に用いた場合の利点やデバッグ手法などについても述べる.
 
 
 \end{abstract}
@@ -73,15 +73,15 @@
 Rakudoは処理速度が他のプログラミング言語と比較しても非常に低速である.
 その為, 現在日本国内ではPerl6を実務として利用するケースは概ね存在しない.
 Perl6の持つ言語機能や型システムは非常に柔軟かつ強力であるため, 実用的な処理速度に達すれば, 言語の利用件数が向上することが期待される.
-その為本研究では, CbCを用いた言語処理系の実装の一例としてMoarVMをCbCで書き換えたCbCMoarVMを提案する.
+その為本稿では, CbCを用いた言語処理系の実装の一例としてMoarVMをCbCで書き換えたCbCMoarVMを提案する.
 
 CbCをMoarVMの実装として利用した場合, CbCの持つ機能によってMoarVMの高速化を中心とした改良に有益な効果があると推測出来る.
 また, 現在までのCbCを用いた研究においては言語処理系への応用例が少ない.
-従って, 本研究はCbCをスクリプト言語の実装に適応した場合, どのような利点やプログラミング上の問題点に遭遇するか, CbCの応用としての側面でも行う.
+従って, 本稿はCbCをスクリプト言語の実装に適応した場合, どのような利点やプログラミング上の問題点に遭遇するか, CbCの応用としての側面でも行う.
 この際にCbCを用いた言語処理系のデバッグを行う際には, CbCを使わずに記述されたオリジナルの言語処理系との並列デバッグが必要となる.
 従ってMoarVMにCbCを適応した場合, どのようにすれば並列デバッグが行えるかについて述べる.
-本稿ではまずCbC, Perl6の特徴及び現在の実装について述べ, 本研究で行ったCbCで書き換えたMoarVMについてデバッグ手法も含め解説する.
-そして本研究で得られたCbCを言語処理系に適応した場合の利点と欠点について述べ, 今後の展望について記載する.
+本稿ではまずCbC, Perl6の特徴及び現在の実装について述べ, CbCで書き換えたMoarVMについてデバッグ手法も含め解説する.
+研究にあたり, 得られたCbCを言語処理系に適応した場合の利点と欠点について述べ, 今後の展望について記載する.
 
 \section{CbC}
 \subsection{CbCの概要}
@@ -127,6 +127,7 @@
 %また本来は操作しないはずのスタック領域の操作が入ってしまうため, プログラマの意図と反したスタックポインタなのど操作が行われてしまいバグが発生する可能性が存在する.
 また, CbCの挙動としてCodeGearへの遷移時には軽量継続を行う為スタック領域の操作は行われないはずである.
 しかし, 現状は配列にCodeGearのアドレスを代入し, 間接的に軽量継続を行おうとすると, スタック領域の操作が通常の関数呼び出しの様に行われてしまう.
+%これは一部CbCコンパイラが利用しているgcc側のref-zoneという機能が影響していたが
 
 \subsection{CbCとCの互換性}
 CbCコンパイラはコンパイル対象のソースコードがCbCであるかどうかを判断する.
@@ -169,13 +170,10 @@
 従って現在ではPerl6とPerl5は別言語としての開発方針になっている.
 Perl6は現在有力な処理系であるRakudoから名前を取りRakuという別名がつけられている.
 
-\subsection{Pugs}
+\subsection{Rakudo以前の処理系}
 Perl6の実装は様々なものが実装された.
 まず2005年に唐鳳によってHaskellで実装されたPugs\cite{pugs}が登場した.
-Pugsは最初に登場したPerl6実装であり, この実装を基にしてPerl6の仕様も修正された.
-現在Pugsは歴史的な実装となっており, 更新はされていない.
 
-\subsection{Parrot}
 その後Pythonとの共同動作環境としてParrot\cite{parrot}が実装された.
 ParrotはPASMと呼ばれるバイトコードを解釈可能なレジスタマシンである.
 ParrotでのPerl6の実装はNQP(NotQuitPerl)と呼ばれるPerl6のサブセットでPerl6を記述するというアイディアの基実装された.
@@ -258,6 +256,9 @@
 今回はファイルを231Kと3GBの二種類用意し, どの様な違いが出るのか測定した.
 
 測定した環境は次の通りである.
+今回は現在広く使用されているスクリプト言語であるPython, Perl5
+またRakudoの処理系による処理時間の差を計測する為にMoarVM, JVMに構築したPerl6の処理速度を計測を行った.
+JVM自体の処理時間とRakudoを構築したJVMの速度の差を見るために, 同様のプログラムをJava10でも行った.
 
 \begin{itemize}
   \item Perl6 (MoarVM) ver.2018.04.01
@@ -279,6 +280,7 @@
 
 計測結果からファイルサイズが小さい場合はMoarVMよりJVMに乗せたPerl6が低速であるが, ファイルサイズが大きい場合はJavaのJITが働くためMoarVMより高速に動いていると推測できる.
 
+
 %# 計測(3GB)
 
 %* Perl5c
@@ -314,6 +316,16 @@
 この章では改良を行ったPerl6処理系であるMoarVMについて述べる.
 今回改良を行ったMoarVMは2018.04.01であり, 利用したNQPは2018.04-3-g45ab6e3バージョンである.
 \subsection{方針}
+Rakudo処理系の処理速度はNQPコンパイラ側の処理速度, 実行環境であるMoarVMなどのVM環境の主に2種類が影響していると考えられる.
+NQP側はNQPで書かれている為, NQPの記述を修正すれば高速化することも考えられるが, 今回はVM側の処理系に着目した.
+Rakudoが動作するVMは複数存在するが, MoarVMが現在主流の処理系である.
+MoarVM自身はCで記述されているため, CbCを導入する事が可能である.
+CbCの持つCodeGearや軽量継続を導入する事で, 通常のMoarVMと比較してよりきめ細やかな実装が出来ると推測される.
+CodeGearをThreadedCodeなどに応用する事で, MoarVMの高速化が見込める.
+また, CbCに関する今までの研究においては, CbCを言語処理系に応用した例が少ない為, CbCを言語処理系に適応した場合の挙動などを確認したい.
+その為, 本稿ではCbCをMoarVMに導入したCbCMoarVMを実装する.
+
+
 MoarVMそのものをCbCで書き換えることも考えられるがMoarVM自体既に巨大なプロジェクトである為すべてを書き換える事は困難である.
 その為まず比較的CbCで書き換えることが容易な箇所を修正する.
 前章までに述べた通りCbCのCodeGearはコンパイラの基本ブロックに該当する.
@@ -394,7 +406,7 @@
 \end{figure}
 
 バイトコードの数は膨大である為, すべてを手作業で変換する事は望ましくない.
-本研究ではPerlScriptを用いてinterp.cからCbCのCodeGearを自動生成するスクリプトを作成した.
+従ってPerlScriptを用いてinterp.cからCbCのCodeGearを自動生成するスクリプトを作成した.
 このスクリプトでは以下の修正手続きを実行する.
 
 \begin{itemize}
@@ -418,7 +430,7 @@
 MoarVM自体のデバッグはMoarVMのリポジトリにテストコードが付随していない為単体では実行不可能である.
 また, CbCを用いて言語処理系の改良時を行った際に言語処理系のデバッグを行う場合は, CbCを用いないオリジナルの処理系との並列デバッグが必要となる.
 MoarVM自体にはデバッグを支援するツールが存在しない為, MoarVM自体のデバッグ方法や, CbCを用いた処理系との並列デバッグについて独自の手法を利用する必要がある.
-本研究ではMoarVMのデバッグにおけるCデバッガの使用方法とMoarVMのテスト方法についても示す.
+本稿ではMoarVMのデバッグにおけるCデバッガの使用方法とMoarVMのテスト方法についても示す.
 
 \subsection{MoarVMのバイトコードのデバッグ}
 MoarVMの実行バイナリであるmoarに対して, MoarVMのバイトコードをdumpオプションを付けて読み込ませると, バイトコードがMoarVMによるアセンブリコードとして出力される.
@@ -481,6 +493,15 @@
 また現在はclang上に実装したCbCコンパイラではCodeGear内部のtaill call除去のエラーが発生してしまう為コンパイルする事が出来ない.
 その為現在はgcc上に実装したcbcコンパイラを利用しgdbを利用しデバッグを行う.
 
+\subsection{他手法との比較}
+本稿ではPerl6処理系の改良としてCbCを用い, 初期の実装を行った.
+CbCを用い無い場合のMoarVMの改良方法としては, 命令コードに対応する処理をCの関数として記述し, この関数のポインタを利用する方法が考えられる.
+関数ポインタの配列を作成し, 次の命令コードに対応する関数をポインタ経由で実行する.
+Cの関数ポインタを利用した場合, CbCと同様に処理のモジュール化は可能である.
+しかし, CbCとは違い軽量継続ではなく関数呼び出しで処理をする為, Cのスタックフレームが非常に巨大になる.
+Cの関数呼び出しのコストから, 通常のcase文やラベルジャンプを利用した場合と速度差的に優位にならない.
+
+
 
 \section{CbCMoarVMの利点と欠点}
 MoarVMの様な巨大なスクリプト言語処理系にCbCを適応した所現在までに複数の利点と欠点が発見された.
@@ -588,7 +609,7 @@
 
 
 \section{まとめ}
-本論文ではCbCによってPerl6の処理系であるMoarVMインタプリタの一部改良とその手法を示した.
+本稿ではCbCによってPerl6の処理系であるMoarVMインタプリタの一部改良とその手法を示した.
 CbCMoarVMではオリジナルのMoarVMと比較して以下の様な利点が見られた.
 
 \begin{itemize}