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author Masato Tawata <e185761@ie.u-ryukyu.ac.jp>
date Tue, 01 Feb 2022 08:02:54 +0900
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\chapter{序論}
\section{空間音響をゲームロジックに取り入れる}
\label{intro}
 昔からゲームに空間音響を取り入れることはよく行われていた。例えば、プレイヤーが洞窟の中に居るのならば音を響かせて狭い空間に居ることを演出したり、音源とプレイヤーとの間に遮蔽物があれば音を篭らせるなどである。
比較的最近発売されたゲームではNiaR:Automata\ref{NiaR}が空間音響をゲームに取り入れた例として代表的である。
 こういったゲームでは空間音響を用いて特定の地点をより印象付けたり、プレイヤーがフィールドを探索する際にシームレスに音響が変化していくことで、より現実に近い自然な体験ができる様になっている。
その一方で、空間音響はゲーム体験を補強する役割のみにとどまっておりゲームを構成する要素で最も重要なゲームロジックまでは関わってこない。仮に空間音響をゲームロジックに組み込む事ができれば次の様な体験ができると考えられる。

まず2人以上で対戦するFPS(First Person Shooting)ゲームを想定する。
プレイヤー同士が壁を挟んで相対している状況において、空間音響が有効でない場合音が壁越しに直接聞こえ、プレイヤーは相手の位置を正確に完全にすることが出来る。その結果、音を目安に壁を飛び出して正確に相手を撃つ、という精密さが求められるゲームとなる。
空間音響が有効な場合、音は壁の切れ目から回り込んで聞こえるためプレイヤーは相手の位置を正確に掴めず、壁越しに敵がいるという情報しか得られない。これによってプレイヤーは慎重に行動する様になるため、精密さが重要だったゲームから慎重さとリスク管理が求められる緊迫感のあるゲーム体験に変様する。
このように、あくまで補助的な要素だった空間音響はゲームロジックに組み込むことでゲーム性そのものを変化させることのできる要素になる可能性がある。
上記の空間音響を利用したゲームではプレイヤーが遮蔽物を設置して音の聞こえ方を変化させたり、壁に穴を開けて敵の油断をついたりなどの要素が追加できると考えられる。その場合、遮蔽物の増減に合わせて音響はリアルタイムで変化していくため、その度に音響の再計算を行う必要がある。音響をリアルタイムで計算する際に問題になるのは、全ての音響計算をプレイヤーが遅延を感じない速度で計算する必要があることである。
そこで本研究では、音響パラメータの計算の軽量化や、音速の概念を取り入れ計算時間に猶予を持たせるなどの実装を行いリアルタイムで音響計算が行えるシステムの実現を目指す。