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author kazz <kazz@cr.ie.u-ryukyu.ac.jp>
date Mon, 08 Aug 2011 17:51:37 +0900
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 %
 % 和文アブストラクト
 \Jabstract{%
-  本研究室では、分散フレームワークとして、 Linda を拡張した FederatedLinda を開発してきた。しかし、分散用の API として、 in/out/read だけでは足りないことが判明した。また、分散 KVS には、 read/write/update といった API があるが、同期する機構は備わっていないため、ゲームなどのリアルタイムプログラム用途にそのまま利用することはできない。\\
+本研究室では、分散フレームワークとして、 Linda を拡張した FederatedLinda を開発してきた。しかし、分散用の API として、 in/out/read だけでは足りないことが判明した。また、分散 KVS には、 read/write/update といった API があるが、同期する機構は備わっていないため、ゲームなどのリアルタイムプログラム用途にそのまま利用することはできない。
+%
 そこで、 Linda の待ち合わせ可能な API と一般的な KVS の持つデータベースの API の中間になるような DataSegment API を設計する。本研究室では、その DataSegment API を用いた分散フレームワークを開発する。}
 %
 % 英文アブストラクト(大会論文には必要なし)
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 %
 \maketitle
 
-\section{はじめに}
-
-
-
-%
-\begin{enumerate}
-\item ({\bf レスポンス}) 通常のスプレー木の操作と同様,
-対数的な償却計算量(amortized complexity)\cite{T85}をもつ.
-
-\item ({\bf スループット}) 操作後の木の形状が,根に近い部分か
-ら葉に向かって
-漸増的に確定するようにすることで,個々の操作が同時に施錠しなければな
-らない節点の数を高々${\rm O}(1)$個におさえる.
-\end{enumerate}
+\section{スケーラブルな分散フレームワークの提案}
+ブロードバンド環境やスマートフォンなどをはじめとしたモバイル端末の普及により、ネットワークに接続している端末が増えている。それにしたがって、ネットワーク上におけるサービスの巨大化は必至となっている。そこで、サービスのスタートアップ時期には少量のリソースで運用でき、ユーザー数が増える時期には、リソースを追加するのみでサービスの質を維持できるといった、スケーラビリティーを備えたシステムが求められている。そのようなシステムを開発するためには、様々なプロトコルを提案し、実装し、検証していく必要がある。そのため、提案したプロトコルを玩具的に実験できるフレームワークが求められている。
 %
-もしスループットだけが目標ならば,二分木を用いなくても,
-線形リストを用いて容
-易に達成できる.したがって,レスポンスとスループット
-を同時に達成することが本質的に重要である.
+本研究室ではこれまでに、 Linda を拡張した FederatedLinda を開発し、スケーラビリティーのあるシステムについて考えてきた。すると、その開発サイクルの中でいくつかの問題点があることが分かった。また、本研究室が開発している、並列フレームワーク Cerium に新しく実装する予定の DataSegment と CodeSegment を用いた並列計算に関するアイディアが、分散アプリケーションにも応用できるのではないかと考えた。上記の理由から、新しい分散フレームワークを提案する。
 %
-B木やその変種に対する並列操作の研究は少なくない\cite{LS86}が,スプ
-レー木の並列性に関する研究は少なく,著者の知る限り,上記の二条件を満たす
-並列アルゴリズムはまだ提案されていない.
-
-本論文では,二分探索木の各節点はキーと値の対を保持するものとし,節点は
-キーの対称順(symmetric order)に並んでいるとする.基本操作として,
-次の二つを考える.単なる節点値の読出しは${\it update\/}$の単純な変
-種と考えることができる.
-
-\begin{description}
-\item{${\it update}(i,v,v',t)$:} キー$i$をもつ節点が木$t$の中にあれば,そ
-の節点の現在の値を$v$に代入したあと,節点に新たな値$v'$を格納する.
-なければ,キー$i$と値$v'$をもつ節点を$t$に挿入し,$v$には節点がなかった
-ことを示す特別の値を代入する.
+本論文では、 DataSegment と CodeSegment を用いた分散フレームワークに関して提案する。
+%
 
-\item{${\it delete}(i,v,t)$:} キー$i$をもつ節点が木$t$の中にあれば,その節
-点の現在の値を$v$に代入したあと,節点を消去する.なければ$v$に特別の
-値を代入する.
-\end{description}
-
-
-\section{関連研究}
-
-\subsection{扁平化とトップダウン扁平化}\label{subsection:splaying}
-
-スプレー木における扁平化とは,節点の探索操作において
-アクセスしたパスの長さをおよそ半分にしつつ,目標
-節点(${\it delete\/}$においては,目標節点の直前または直後のキーをもつ節点)
-を木の根まで浮上させる操作である.扁平化は枝の回転(rotation)を基本操
-作としており,図\ref{figure:splaying}に示す
-zig, zig-zig, zig-zagのうちの適切な操作をボ
-トムアップに繰り返す.以下本論文では,左右対称な操作群はその片方のみを示
-す.また図中の小文字は節点,大文字は部分木を示す.
-%
-${\it update}$, ${\it delete\/}$等の個別の
-操作アルゴリズムについては多くの変種がある.扁平化の大きな特徴は,アクセ
-スしたパス上の各節点の深さを約半分にする一方で,アク
-セスしたパスの上にない節点を,高々${\rm O}(1)$段しか深くしないこと
-である.
-
-\begin{figure}[tb]
-\begin{center}
-\scalebox{1.00}{\includegraphics{fig1.eps}}
-\end{center}
-\caption{
-ボトムアップ扁平化操作の1ステップ. % \cite{ST85}
-$x$ がアクセスした節点.(a) zig: 1回の右回転($y$が根の場合
-のみ),
-(b) zig-zig: 枝$yz$と枝$xy$をこの順に右回転,(c) zig-zag: 枝$xy$
-を左回転し,できた枝$xz$を右回転.}
-\label{figure:splaying}
-\end{figure}
-
-扁平化はボトムアップな変形操作であるため,並列操作には適さない.
-文献\Cite{ST85}はトップダウン扁平化も提案しているが,これは実装の
-容易化が主な目的であり,木の根は操作終了の直前まで確定しない.
+\section{FederatedLinda}
+これまでに本研究室では、分散フレームワーク FederatedLinda を提案し、実装してきた。その実装には、以下の通り3段階のレベルがあった。
+\subsection{Level. 1}\label{"level1"}
 
 
-\subsection{並列操作に関する過去の研究}\label{subsection:related-parallel}
-
-和田\cite{W90}は,並行論理型言語\cite{S89}の論理変数を用いた扁
-平化アルゴリズムを提案している.これは,論理変数を利用して,
-トップダウン扁平化をin-placeで行なうようにしたものと見なすこともできる
-が,${\it update\/}$のように,対象となる節点が操作終了後の木に存在するこ
-とがわかっている場合は,木の根のキーを操作の最初に確定させる点が大きな特徴で
-ある.
-% 
-% 数百節点の連続挿入操作の並列度は4〜8であるという実験結果が
-% 報告されている\cite{W90}.
-%
-しかしこの技法は,
-${\it delete\/}$のように,操作結果の木の根が事前にわから
-ない場合には適用できない.
-
-
-\subsection{トップダウン扁平化の問題点}
-
-トップダウン扁平化による${\it update\/}$は,
-\ref{subsection:related-parallel}節のように
-根のキーを最初に確定させるよ
-うにしても,並列処理の観点からは問題が残る.たとえば,節点
-$x(<b)$ ($<$はキーによる順序関係)の${\it update\/}$によって起きる
-図\ref{figure:topdown}の
-zig-zig操作\cite{W90} を考える($L$と$R$は,木$C$をトップダウン扁平
-化した結果の左(右)部分木で,${\it update\/}$完了時までに確定).
-
-% \begin{adjustvboxheight}
-\begin{figure}[tb]
-\begin{center}
-\scalebox{1.00}{\includegraphics{fig2.eps}}
-\end{center}
-\caption{トップダウン扁平化による${\it update\/}$}
-\label{figure:topdown}
-\end{figure}
-% \end{adjustvboxheight}
-
-この${\it update\/}$の後,$y(<x)$, $z(>b)$へのアクセスがこの順に続くと
-する.最初の$x$へのアクセス時に$x$が部分木$C$の左の方にあったためにzig-zig操作
-が続く場合,$L$の
-根が確
-定するのは遅くなる.しかし$L$の根が確定するまでは,次の$y$へのアクセ
-スがzig, zig-zig, zig-zagのどれをまず適用するか決められない.
-% 
-% 長く待っても,目標の節点の上昇段数が多ければ問題はないのであるが,
-% それが
-%
-そこで3番目の
-$z$へのアクセスが,2番目の操作によって影響を受けることのない$b$の右部分
-木に向かうにもかかわらず,長時間ブロックしてしまう.
-
-削除操作はさらに問題である.一般に,二分木から節点$x$を削除するには,
-$x$の左部
-分木の最大の節点$y$を探してそれを$x$の場所に移すことが基本とな
-る.しかし,扁平化の有無にかかわらず,$y$が見つかるまでは$x$の場所
-にくる新たなキーは確定せず,後続の操作をブロックしてしまう.以下のよう
-な解決法も考えられるが,いずれもうまく動作しない.
-
-\begin{enumerate}
-\item % {\bf 一時的なキー}
-$y$が見つかるまで,$x$を一時的なキーとして利用すると,
-$y\le z\le x$であるような節点$z$への操作を誤った方向へ導く.
-
-\item % {\bf 双方向リスト}
-各節点が直前と直後のキーをもつ節点へのポインタを保持することによって,
-$x$の直前の要素$y$に${\rm O}(1)$時間でアクセスできるようにする
-ことが考えられる.これらのポインタは木
-の扁平化時に変更する必要がないという特徴がある.
-% 
-しかしこの方法は逐次操作のときしかうまく動作しない.
-% 
-% あるプロセスが節点
-% $x$を削除しようとしたとする.そのプロセスは節点$y$に${\rm O}(1)$時間でア
-% クセスできるものの,単にそれを削除して$x$のかわりに用いることはできない.
-% (invisible pointer?)
-%
-なぜならこの削除操作の前の操作が$x$と$y$を結
-ぶパスを下降中で,いずれ$y$に到達するかもしれないからである.
-\end{enumerate}
-
-したがって本論文では,高々${\rm O}(1)$個の節を施錠しつつ,厳密にトップダウ
-ンに木を変形してゆくアルゴリズムを考えることとする.
 
 \section{並列更新アルゴリズム}\label{section:update}