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author | sugi |
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date | Fri, 22 Feb 2013 16:18:39 +0900 |
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\chapter{分散ネットフレームワーク Alice} \label{chap:concept} \section{Alice} Alice\cite{kono11g}は、本研究室で開発を行なっている分散タスク管理フレームワークである。 Cell 用のOpen CLに似たTask管理フレームワークCerium\cite{kono09b,cerium-sourceforge}と、Linda\cite{linda}を相互接続した分散フレームワークであるFederated Linda\cite{kono05b}の開発を通して得られた知見を生かされている。 Ceriumでは、Taskを小さく分割して並列実行し、データ転送はパイプライン実行により隠される。Taskには依存関係があり、その記述は煩雑になるが、実際にはデータの依存関係がそのままTaskの依存関係になることが多い。繰り返し使われるデータ構造の管理が重要であり、実行時にわかるデータ構造間の依存関係がTaskを複雑にしている。 Federated Lindaでは、Lindaサーバ内部にMeta Engineと呼ばれるLindaのタプル(データ構造)をやり取りする部分を作成した\cite{kono10d}。Meta Engineでは、タプルのやり取りによって起動するcall backを使うが、call backによる記述が分散してしまい、可読性を落としてしまう。また、複数のタプルの待ち合わせが重要だが、その待ち合わせはsingle threadedなMeta Engine内部の状態に依存する。 これらが示しているのは、並列分散実行はコードの並列実行だけでなく、データの単位が重要だということである。そこで、AliceはData SegmentとCode Segmentという単位でデータと処理を細かく分割し、それぞれの依存関係を記述して分散プログラムを作成する。Code SegmentはContinuation based Cの実行単位\cite{kono00a,cbc-sourceforge} であり、その双対がData Segmentである。 Data SegmentはCode Segmentと分離されたデータ構造であり、オブジェクトではない。オブジェクト指向プログラミングが状態を複雑に持ち、並列実行や分散実行に向かないことは徐々に理解されてきている。一方で、状態自体は有限状態遷移機械(Finite State Machine/FSM)で記述するのが自然である。Code Segmentは状態遷移記述そのものであり、その状態遷移はData Segmentの到着によってトリガーされる。 カプセル化されたデータをプロセスがやり取りするのは、DFD(Data Flow Diagram)の古典的な手法であり、それ自体は新しくはない。むしろ、メインフレーム上でのソフトウェア開発に良く使われてきた手法である。Alice では、それを再実装する。 AliceはCode SegmentとData SegmentをJavaとMessage Packで実装したフレームワークである。トポロジーマネージャーを持ち、Blade上での 分散プログラムの実験を容易に行うことができる。また、SEDA Architecture \cite{SEDA2001}を採用しており、マルチコア上でのスループットの向上を期待している。 \section{Data Segment API} Data Segmentは、データ細かく分割したものであり、数値や文字列などのデータを構造体的に保持す るが問題はData Segmentの相互参照問題である。AliceはData Segmentをデータベースとして扱う。 Data Segmentは必ずキーを持つ。つまり、Key Value Storeとして考えることができる。 通常のデータベースでは隠されているが、Key毎にキューがあり、key毎に順次実行される。 Aliceのデータベースは通常のKVSと若干異なっている点がある。通常のKVSはプログラミング言語の連想配列やMapと同様に「Key(キー)」と「Value(値)」がペアとなってる。そのためKeyに対して取得できるValueは当然1つである。しかし、Aliceの場合は「Key」と「Queue」がセットとなっているため、Keyに対して複数回putできる。そのため取得できるValueも複数存在する。 key毎の追加と取得は、Lindaに準じた設計になっている。 Data SegmentはData Segment Manager(以下DSM)によって管理されている。ノード毎にLocal DSMとRDSMが存在する。Local DSMは、各ノード固有のKey Value Storeとなっている。従って、Keyはノード内部でuniqueなものである。Remote DSMは他のノードのLocal DSMのproxyである。(図 \ref{fig:RemoteDSM}) AliceのトポロジーマネージャーがRemote DSMを自動的に構築する。つまりRemote DSMは複数存在し、それぞれに対応するノードが異なる。 \begin{figure}[htbp] \begin{center} \includegraphics{fig/remote_datasegment.pdf} \end{center} \caption{Remote DSM は他の ノードの Local DSM の proxy } \label{fig:RemoteDSM} \end{figure} KVSへのアクセスはキューによって、ノード内部で逐次化される。それ以外は、すべてJavaのThread Poolによって並列実行される。Code Segmentが実行される際には、Data Segmentが揃っているのでBlockingが起こることはない。逆にBlockingが必要な場合は、Code Segmentを分割する必要がある。 以下が用意されているData Segment APIである。これらを用いてデータの送受信を行う。 \begin{itemize} \item {\ttfamily void put(String key, Value val)} \item {\ttfamily void update(String key, Value val)} \item {\ttfamily void peek(Receiver receiver, String key)} \item {\ttfamily void take(Receiver receiver, String key)} \end{itemize} \subsection{put} putはデータを追加するためのAPIである。putは受けとったvalをキーに毎重複しない連番のIDを受け取った順に振る。Lindaのout()に相当する。(図 \ref{fig:put}) \begin{figure}[htbp] \begin{center} \includegraphics{fig/put.pdf} \end{center} \caption{putはデータを追加する} \label{fig:put} \end{figure} \subsection{update} updateはデータを置き換える特急メッセージのように動作する。 putと同様に受けとったvalをキーに毎重複しない連番のIDを受け取った順に振る。Lindaのupdate()に相当する。(図 \ref{fig:update}) \begin{figure}[htbp] \begin{center} \includegraphics{fig/update.pdf} \end{center} \caption{updateはキューの先頭を書き換える} \label{fig:update} \end{figure} \subsection{peek} peekはデータを調べるAPIである。(図 \ref{fig:peek}) 要求したData Segmentが存在しなければ、Code Segmentの待ち合わせ(Blocking)が起こる。(図 \ref{fig:no_peek}) \begin{figure}[htbp] \begin{center} \includegraphics{fig/peek.pdf} \end{center} \caption{peekはデータを調べる} \label{fig:peek} \end{figure} putやupdateによりData Segmentに更新があった場合、peekが直ちに実行される。目的のData Segmentを取得できた場合、Data Segmentを作成したCode Segmentがactive queueに移される。Lindaのrd()に相当する。 \begin{figure}[htbp] \begin{center} \includegraphics{fig/peek1.pdf} \end{center} \caption{希望のデータが無いときは保留する} \label{fig:no_peek} \end{figure} \subsection{take} takeもデータを読み込むためのAPIである。読み込まれたデータをKVSから取り除かれる。Lindaのin() に相当する。(図 \ref{fig:take}) \begin{figure}[htbp] \begin{center} \includegraphics{fig/take.pdf} \end{center} \caption{take はデータを読み込む} \label{fig:take} \end{figure} \section{Data Segmentの実装} Data Segmentのデータの表現にはMessagePackを利用している。 MessagePackに関してJavaにおけるデータ表現は以下の3段階あり、これらのデータ表現は制限を伴うが互いに変換可能である。 \begin{itemize} \item {\ttfamily 一般的なJavaのクラスオブジェクト} \item {\ttfamily MessagePack for JavaのValueオブジェクト} \item {\ttfamily byte[]で表現されたバイナリ} \end{itemize} Data Segment APIでは、このMessagePack for JavaのValueオブジェクトを用いてデータが表現されている。 MessagePackはJavaのように静的に型付けされたオブジェクトではなく、自己記述なデータ形式である。MessagePack for JavaのValueオブジェクトはMessagePackのバイナリに シリアライズできる型のみで構成されたJavaのオブジェクトである。そのため、Valueも自己記述式のデータ形式になっている。 Valueオブジェクトは通信に関わるときには、シリアライズ・デシリアライズを高速に行うことができる。 また、ユーザーはメソッドを用いてオブジェクト内部のデータを閲覧、編集することができる。 ユーザーが一般的なクラスをIDL(Interface Definition Language)のように用いてデータを表現することができる。 この場合、クラス宣言時に@Messageというアノテーションをつける必要がある。もちろん、MessagePackで扱うことのできるデータのみをフィールドに入れなければならない。 \section{Code Segment} Code Segmentはタスクのことである。Code Segmentをユーザーが記述するときに、Code Segmentの作成を記述する。Code Segment内で使用するData Segmentの作成を記述する。Code Segmentには、Input Data SegmentとOutput Data Segmentを作るAPIが存在する。 \begin{figure}[htbp] \begin{center} \includegraphics{fig/dsandcs.pdf} \end{center} \caption{Code SegmentはInput Data Segment とOut put Data Segmenが存在する} \label{fig:dsandcs} \end{figure} Input Data Segmentで作成されたData Segmentは、remoteかlocalか、またkeyを指定する必要がある。Input Data Segmentがすべて揃うまでCode Segmentはactiveにならない。 Out Data Segmentで作成されたData Segmentに対してもremoteかlocalか、keyを指定する必要がある。 Input Data Segment とOut put Data SegmentがCode Segment間の依存関係を自動的に記述することになる。(図\ref{fig:dsandcs2}) \begin{figure}[htbp] \begin{center} \includegraphics{fig/dsandcs2.pdf} \end{center} \caption{Input Data Segment とOut put Data SegmentがCode Segment間の依存関係を自動的に記述する} \label{fig:dsandcs2} \end{figure} idsとods によりInput/Outputを選択してData Segmentを作成する。Outputにはput時(update時)にremoteかlocalか、keyを指定する。Inputの場合にはsetKeyする際にremoteかlocal、keyを指定する。 今現在はInputはsetKeyをする際に、Outputはputの際にノードとkeyを指定しているが、どの時点でノードとkeyを指定するのか、どのようなAPIを用意するべきかは、まだ議論の余地がある。 \section{Code Segmentの実行方法} Aliceには、Start Code SegmentというCのmainに相当するような最初に実行されるCode Segmentがある。Start Code SegmentはどのData Segmentにも依存しない。つまりInput Data Segmentを持たない。このCode Segmentをmainメソッド内でnewし、executeメソッドを呼ぶことで実行を開始させることができる。(ソースコード \ref{fig:StartCodeSegment}) \section{Code Segmentの記述方法} Code Segmentをユーザーが記述する際にはCode Segmentを継承して記述する。(ソースコード \ref{fig:CodeSegment})そのCode SegmentはInput DSMとOutput DSMを利用することができる。 \begin{table}[htbp] \lstinputlisting[label=fig:StartCodeSegment, caption=StartCodeSegmentの例]{source/StartCodeSegment.java} \end{table} \begin{table}[htbp] \lstinputlisting[label=fig:CodeSegment, caption=CodeSegmentの例]{source/TestCodeSegment.java} \end{table} Input DSMはCode Segmentのidsというフィールドを用いてアクセスする。 \begin{itemize} \item {\ttfamily Receiver create(CommndType type)} \end{itemize} createでコマンドが実行された際に取得されるData Segmentが格納される受け皿を作成する。引数にはCommandType取る。ここで指定できるCommandTypeはPEEKまたはTAKEである。 \begin{itemize} \item {\ttfamily void setKey(String managerKey, String key)} \end{itemize} setKeyメソッドにより、どこのData Segmentのあるkeyに対してpeekまたはtakeコマンドを実行するかを指定することができる。 コマンドの結果がレスポンスとして届き次第Code Segmentは実行される。 Output DSMはCode Segmentのodsというフィールドを用いてアクセスする。Output DSMはputまたは updateを実行することができる。 \begin{itemize} \item {\ttfamily void put(String managerKey, String key, Value val)} \item {\ttfamily void update(String managerKey, String key, Value val)} \end{itemize} \section{Topology Manager} Aliceは複数のノードで構成され、相互に接続される。通信するノードは、URLにより直接指定するのではなく、TopologyManagerで管理する。 TopologyManagerはトポロジーファイルを読み込み、参加を表明したクライアント(以下、Topology Node)に接続するべきTopology NodeのIPアドレス、ポート番号、接続名を送りトポロジーファイルに記述されたとおりにトポロジーを作成する。(図\ref{fig:topologymanager}) Code Segment内部でRemote DSMにアクセスする場合はToplogyManagerによって指定されたノード内部だけで有効なlabel(文字列)を使う。これにより特定のURLがCode Segment内部に記述されることを防いでいる。 \begin{figure}[htbp] \begin{center} \includegraphics{fig/topologymanager.pdf} \end{center} \caption{Topology Manager はトポロジーファイルの記述に従ってトポロジーを生成する} \label{fig:topologymanager} \end{figure} \subsection{Topology Manager の設定ファイルの記述方法} Topology Managerが読み込むトポロジーファイルは Language\cite{graphviz}と呼ばれる言語で記述する。 DOT Languageはプレーンテキストを用いてデータ構造としてのグラフ構造を表現するデータ記述する言語の一種である。 このDOT Languageを用いてクライアント間の接続を表現する。 テキストのみではユーザーが望む形のトポロジーかどうかを判断しにくい。ノードの数が少なければ、可能であるがノードの数が増加するに連れて困難になるが、dotコマンドを用いることでその問題を解決することができる。 dotコマンドでトポロジーファイルを画像として出力することができるので、記述したトポロジーが正しいことを可視化して判断することができる。 クライアント間の接続にはlabelを用いて名前が割り振られている。この接続名を指定することでユーザーは他のノードのDSMにアクセスすることができる。ReceiverにsetKeyを行う際、odsでput、updateする際のmanagerKeyがlabelである。(図\ref{fig:ring}) AliceのNodeを起動する際にコマンドライン引数としてTopology ManagerのIPアドレスとポート番号を指定する。main関数内でTopologyNodeのnewを行い、その際に引数として渡すだけでよい。TopologyNodeの第一引数はAliceのdeamonの設定オブジェクト、第二引数はStart Code Segmentである。このStart Code Segmentがトポロジーが完成した後に実行される。 \begin{table}[htbp] \lstinputlisting[label=ring, caption=3台でリングを組んだ時の例]{source/ring.dot} \end{table} \begin{figure}[htbp] \begin{itemize} \item {\ttfamily dot -T png ring.dot -o ring.png} \end{itemize} \begin{center} \includegraphics{fig/ring.pdf} \end{center} \caption{dotコマンドで作成された3台で構成されたリングのグラフ} \label{fig:ring} \end{figure}